もしもこれを見ているあなたがクラウドファンディングのサポートが規制されていない世界の方であれば、このボタンを押してくれ。

プロローグ

ちくしょう!!せっかくたどり着いたのに!!

ふははは、残念だったなぁ。

この世界ではクラウドファンディングは自分ひとりでするのが常識である。

何でだよ!誰かを助けるのがそんなに悪いのかよッ!!

黙れ!人を堕落させる悪魔め!

クラウドファンディングを手伝うという行為は組織によって取り締まられている。
サポートをした者も依頼した者も性犯罪者と同じように恥ずかしい存在として扱われ、いつしか一般人の記憶からも失われつつあった。

でも!猫の手を借りれば成功するって訊いた!あなたがその猫の手なんだろ!?

私はあくまで影のサポート。あとはあなたの覚悟次第。あなたが本気なら全力でサポートしましょう。

しかし、そんな中でも挑戦する人を陰ながらサポートし、組織の考え方に抵抗する者たちがいた。
人は彼らのことを「猫の手」と呼んだ。

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・・・・・・

そのぐらい自分でやらなきゃいけないんだぞ!

そうだそうだ

おー、どうしたどうした?

学校の自由研究で切り絵をしようって言い出したのに実際に切るのは苦手だから誰かやってって言うんだ

私、絵は得意だから皆の絵も私が描けば…

何でも1人でやらないとちゃんとした大人になれないんだぞ

そうだそうだ

切り絵の分業制。すごいじゃないか。

でも1人でやらないとちゃんとした大人に…

いいや、そんなことないぞ。あの人みたいな生き方もあるんだからな。

あの人?

よし、少し昔話をしてやろう。とあるパン屋の小さな挑戦の物語を。

挑戦

やっと…やっとたどり着いた…!

男は睨みつけるように昼間から刺し身をつまみに酒を飲んでいる女の前に立っていた。

なんだい?騒々しいね。

…助けてくれ。あんたに頼ってでも叶えたいことがあるんだ。

男の切羽詰まった剣幕に周りの客の注目を集め始めている。

場所を変えよう。ついてきて。

女は建物の中には入らず周囲を警戒しながら外にある鉄の扉をゆっくり開け、男を促した。

黒門アジト地下道

そこには地下に続く階段があった。見るからに怪しい階段を降り、今にも何かが飛び出してきそうな通路を進むとこれまた怪しいバーラウンジに通された。

黒門アジトバー

あなたも一杯飲む?

そんなことより!あ、あんたならやれるんだろ!?

せっかちね。まずは落ち着いて。とりあえず話を聞かせてくれる?

話をまとめると、男は街のパン屋で先代からお店を引き継いだそうだ。しかしこのお店の経営が厳しくこのままでは継続できなくなるのが見えているらしい。
そこでクラウドファンディングで新たなサービスを広め、起死回生を狙いたいという話だった。

でも、1人では難しそうと。

お店を回すことで正直手一杯で。クラウドファンディングってやることたくさんあるん…ですよね?周りでも挑戦したけど結局中途半端で1円も集まらずに倒れていった奴らを見てきました。

ええ、その中でも鬼門はリターンの考案と差し戻し対応。ここで挫折する人が後を絶たないのよね。

自分で考えたリターンって結局独りよがりなんじゃないかって不安で。

大抵はそれで守りに入っちゃって面白みのないものが完成する。

でも!猫の手を借りれば成功するって聞いた!あなたがその猫の手なんだろ!?

眉唾ね。

…っ!

まず猫の手を借りたところで行動するのはあなた。あなたがそんな甘い考えなら十中八九残念な結果になり、残念なページが残り続けるでしょうね。

でも、どうしたら良いのか全然分からなくて…。

その疑問や相談に乗るのが猫の手の役割。あなたに必要なのは絶対に成功させるという強い想い、それだけよ。何のためにやるんだっけ?

先代…そうだ。俺は先代から引き継いだこの店を子どもたちが気軽に遊びに来れる憩いの場にしたいんだ。

素敵な目標ね。

これは他の誰でもない、先代でもない。俺の目標だ。今まで頼って責任放棄することばかり考えてて自分ごとになりきれてなかった。

でも初めての挑戦は分からないことだらけ。全てを1人で抱える必要はないの。そこを担うのが猫の手よ。

よろしくお願いします!

ヤマシタよ。私はあくまで影のサポート。あとはあなたの覚悟次第。あなたが本気なら全力でサポートしましょう。

こうして「先代から引き継いだパン屋を子どもたちが気軽に遊びに来れる憩いの場にしたい!」というプロジェクトがスタートした。

プロジェクト開始

じゃあまずアカウント作成からね。分からないところはサポートするからやってみて。

アカウント作成

次はプロフィール設定をしてプロジェクト本文を書いてみて。この流れに沿って書くと伝わりやすいから頑張ってあなたの想いをぶつけるのよ。

俺の…想い。

本文作成画面

ヤマシタからのアドバイスを参考にプロジェクトページを作り上げていくパン屋。
その間も一般の人たちは猫の手なんてものがあることを知らず、忙しい日々の中自分たちだけでプロジェクト作りを強いられ疲弊していく。
精神はすり減り夫婦仲が悪化、仲間の裏切り、子どもたちの泣き声…。
あらゆるものが自分にのしかかっているように男には思えた。

俺だけズルしてるみたいだ。だが、下手に騒いで組織にバレるわけにはいかない。俺は俺の挑戦をやりきらねば。

そして一通り完成

よし、ひとまず申請をしてみましょうか。

よしいってくれ!

無事に申請は完了した。
すると罪状のようなもの凄い長文の差し戻しメールがパン屋のもとに届いた。

差し戻しメール

あうあうあう…

ふむふむ、なるほど。そういうことね。内容をまとめて送るからまた明日来てちょうだい。

ポイント

  • プロジェクトの申請をしたら必ず一度は差し戻しメールが届きます。必ずです。これは不備やミスの指摘以外にも記載事項のエビデンスは取れているかどうかなど「ただの確認」も含まれるためです。

そういってヤマシタは差し戻しメールの解析を始めた。言われたとおり翌日アジトに向かうとそこには警察がウロウロしていた。急いでその場から離れると事前にヤマシタから言われていた連絡ツールラインから連絡が入っていることに気づいた。

どうやらアジトが警察にバレたようね。もうあそこには近づかない方がいい。私はしばらく身を隠してラインから連絡を送る。そんなことより昨日送った資料に目を通してくれた?

と、何事もなかったかのように差し戻しメールの内容を分かりやすく噛み砕き連絡をくれていた。パン屋はその内容に従い情報を集め、再申請。そしてついにOKが出る。

ついにここまで来た。

いい?公開する前に仲間を集めておくのよ。姿は見せられないけど、プロジェクトの動向は常に見ているから。

分かった。努力する。

ここからが本番よ。頑張って。

パン屋はスタートダッシュをきれるよう公開前に一生懸命仲間集めをした。
メッセージを送ったり、誰かのイベントに積極的に参加してはクラウドファンディングの宣伝をして回った。

◯月☓日にね・・・・・・

このプロジェクトの想いはホニャララで・・・・・・

プレビューページのURLを送るからひとまずいいね!だけでも・・・・・・

ポイント

  • 開始前に目標額の20%以上の支援者を確定させておくのがポイントです。100%集めておけたら理想。また、プロジェクト開始の日時を連絡しておき、開始24時間以内に20%を達成させましょう。

そしていよいよ公開日がやってきた。

…緊張するな。でもやれることはやった。いざ公開…!

するとポツポツと支援が入り始めた。
パン屋は公開の日にちだけでなく時刻も伝えていたことから支援者はそのタイミングに合わせて支援してくれたようだ。

ありがてぇ…圧倒的にありがてぇ…。

さて、息巻いて公開したは良いけど、これから何をしたらいいんだ。俺は一体どうすれば…?

そんな時にヤマシタから連絡が。

良いスタートダッシュおめでとう。次は活動報告とSNSを使い、今の想いや展望、仲間への感謝を出しまくるんだ。

スタートダッシュの勢いのままに注目のプロジェクトにも挙げられるようになるとやがて組織が気づき始める

ポイント

  • クラウドファンディングのプラットフォームには今勢いがあるプロジェクトを注目のプロジェクトという形で目立つ表示で大きく取り上げる場合がある。広告枠を買うのと同じようにアピールになる。

こ、これはおかしい!他の奴らと違うぞ。

この支援者たちの中に手を貸してる奴がいるはずだ!探せ!

貴様か!それとも貴様か!

しかし証拠は何もないため組織の者が取り締まろうとすればするほどSNSは盛り上がり、仲間たちは「パン屋さんの本気が見えたから支援しただけだ!サポートの存在なんか知らない!」と組織の者の尋問に答える。さらに不当な監禁・尋問がSNSで拡散され、炎上は収まらず瞬く間にプロジェクトはファーストゴールを達成した。
ほどなくしてヤマシタから連絡が届く。

いい流れね。このままセカンドゴールを目指しましょ。

分かった。ここまで来たらやってやる!

パン屋はヤマシタからのアドバイスの通り、サムネイルの更新と活動報告で真に目指したいところへの想いを語り、見事にセカンドゴールも達成した。

ポイント

  • サムネイルにセカンドゴール挑戦中を記載することで、設定金額100%に達していてもプロジェクトが続いていることをアピールできる。

本当にありがとうございます!その…お礼はどうすれば?

この中から適当に選んでくれ。

ヤマシタはそう言ってAmazonほしいものリストのリンクを送ってきた

良いものを見せてもらったよ

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・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

エピローグ

そのパン屋1人では成功はなかったと思う。だから得意な分野で助け合っていくのは決して恥ずかしいことじゃないんだ。

なんかかっけー!

ほんとほんと

いいか。人に任せられるのは器が大きい人間だ。全て1人で抱える必要はない。苦手なところは人を頼り、自分がやるべきところに力を集中する。そして関わってくれた人全てに感謝できる人間になれよ。

長文やめろよなぁ

そうだそうだ

その後、その猫の手の人はどうしたの?

さぁな。今頃どこかで酒でも飲んでるんじゃないかな。

ふ~ん

おじさんも同じパン屋さんなんだから頑張れよ!

そうだそうだ

はいはい、新作パンやるからとっとと自由研究片付けてこい。

ふとラインに目をやるとヤマシタからの最後のメッセージが目に入る。この時の気持ちを忘れないようにピン留めしているようだ。

おめでとう。この結果はあなたの努力の成果よ。胸を張ってこれからも頑張って。

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